
簿記1級の通信講座、結局どれがおすすめなんだろう
比較サイトをいくつも開いてみたものの、かえって迷ってしまった。そんな状態で、このページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
迷ってしまうのは、あなたの決断力の問題ではありません。検索結果に並ぶ記事の多くが価格順のランキングと各社の機能一覧でできていて、肝心の自分の評価・判断軸を示してくれないからです。し
かも簿記1級は、受験機会が年2回しかない長期戦。選び直しがきかないという緊張感が、余計に決めづらくさせます。
私は大学で会計学・財務会計を教えている研究者です。毎年300名を超える学生に簿記や会計を教える中で、同じ教材を使っても、伸びる人と途中で止まってしまう人がはっきり分かれる場面を何度も見てきました。その差は「どの講座が優れているか」ではなく、試験の構造と、自分が確保できる時間に合った選び方ができているかで決まります。
そこでこの記事では、簿記1級の通信講座を答練・会計学対策・保証制度という3つの軸で比較する方法を、会計を教える立場からお伝えします。あわせて、他の比較記事がほとんど触れていない2027年度の出題区分表改定——新リース会計基準への対応が、いま講座を選ぶ人にどう影響するのかも解説します。
読み終えるころには、「自分が優先すべき条件」がはっきりして、候補が2〜3社に絞れているはずです。難易度の高い試験ですが、正しい順序で積み上げれば届きます。まずは、迷いを一つずつ減らしていきましょう。
記事の執筆者

・年間300人以上の大学生に簿記を教える大学教員。
・日本人の会計リテラシーを高めるを理念に、会計ラボを運営中。
結論|簿記1級の通信スクールおすすめ
1〜2年の長期戦を見込む人、保証制度を重視する方→クレアール
実績と模試を重視する人→資格の大原
自宅以外の学習場所が欲しい人→資格の学校TAC
再受験で経験者コースを探している人→ネットスクール、資格の学校TAC
簿記1級か公認会計士か悩んでいる人いませんか?
公認会計士試験につなげようと簿記1級を考えている人は、公認会計士試験の勉強を始めた方が効率的です。
おすすめの公認会計士スクールは以下の記事で解説しているので、公認会計士をめざす方はこちらを参考にしてください。
結論:簿記1級の通信講座は「価格」ではなく「答練・会計学・保証制度」で選ぶ
先に結論をお伝えします。簿記1級の通信講座選びで見るべきなのは、次の3点です。
- ①答練・模試の量と母集団……1級は相対評価の色が強い試験。自分の現在地を測れる仕組みに価値がある
- ②会計学(理論)の講義設計……1級で新たに登場する科目。計算科目と同じ教え方では伸びにくい
- ③保証・延長制度……受験機会が年2回しかない試験では、次回まで学習を継続できる仕組みが実質的な保険になる
タイプ別・最短で結論が出る早見表
| あなたの状況 | 優先すべき条件 | 候補になりやすい講座 |
|---|---|---|
| 働きながら/1日1〜2時間しか取れない社会人 | 短時間の講義単位・スマホ完結・長めの保証期間 | スタディング、クレアール |
| 2級合格直後にそのまま1級へ進む | 体系的なテキスト・演習量 | LEC、TAC、資格の大原 |
| 一度不合格を経験した再受験者 | 経験者コース・答練中心・成績データ | ネットスクール(経験者コース)、大原(直前対策・模試パック) |
| 学生/会計士・税理士も視野に入れている | 理論の深さ・網羅性 | 資格の大原、TAC、LEC |
| 費用を最優先したい | 低価格帯+無料教材の併用設計 | スタディング+CPAラーニング(その他の無料学習コンテンツ) |
※あくまで一般的な傾向にもとづく整理です。講師との相性は個人差が大きいため、無料体験講義で必ず確認することをおすすめします。
上位比較サイトの「安さランキング」を鵜呑みにしてはいけない理由
受講料6万円台の講座と16万円台の講座では、たしかに10万円近い差があります。ただ、簿記1級で本当に高くつくのは「受験が1回延びること」です。
簿記1級の統一試験は6月と11月の年2回。つまり一度見送ると、次のチャンスまで約5か月から半年待つことになります。その間の学習継続コスト、モチベーションの維持、教材の買い直し——これらを金額に換算すると、初期費用の差はしばしば逆転します。
安い講座が悪いという話ではありません。「自分が最後まで走り切れる設計か」を価格と同じ重みで評価する——これが1級ならではの判断軸です。
簿記1級試験の基本情報

講座選びの基準は、すべて試験の構造から導かれます。少し遠回りに見えますが、ここを押さえておくと以降の判断がぐっと楽になります。
試験日・受験機会は年2回(1級にネット試験がない意味)
日商簿記2級・3級は統一試験(ペーパー)に加えてネット試験(CBT方式)が実施されており、テストセンターの空きがあれば随時受験できます。
一方、簿記1級は統一試験のみで、6月・11月の年2回です。
この違いは、学習計画に決定的な影響を与えます。
- 2級・3級……「仕上がった時点で受験する」ことが可能
- 1級……「試験日から逆算して仕上げる」しかない
したがって1級の学習では、目標検定月を先に決め、そこから逆算してカリキュラムを選ぶのが基本になります。「なんとなく始めて、そのうち受ける」が最も機能しない試験だと考えてください。
試験科目と配点、合格基準(合計70点+科目別の足切り)
| 科目 | 配点 | 性質 |
|---|---|---|
| 商業簿記 | 25点 | 計算中心。範囲が最も広い |
| 会計学 | 25点 | 1級で新登場。理論問題を含む |
| 工業簿記 | 25点 | 計算中心。2級からの発展 |
| 原価計算 | 25点 | 意思決定会計など管理会計色が強い |
合格基準は4科目合計で70点以上。ただしそれだけではなく、1科目でも得点が40%(10点)に満たないと不合格になります。これがいわゆる「足切り」です。
合計は足りているのに1科目で沈む——教育現場で、これは本当によく見る不合格パターンです。得意科目を伸ばすより、苦手科目を10点の壁より上に引き上げるほうが、合格確率への寄与は大きい。この構造は、後述する講座選びの軸に直結します。
直近の合格率の推移と、その数字が「相対評価」であることの意味
日商簿記1級の合格率は回によって変動しますが、近年はおおむね10%前後から15%程度で推移しています(最新の受験者データは日本商工会議所の公式サイトでご確認ください)。2級が約20%前後、3級が約35%前後とされることを踏まえると、難易度の高さがうかがえます。
ここで押さえておきたいのが、1級は事実上「相対評価」の性格を帯びるという点です。形式的な合格基準は70点ですが、問題の難易度は回ごとに大きく揺れます。難問回では素点が伸びず、易問回では取りこぼしが致命傷になる。つまり、合否を分けるのは「絶対的な点数」ではなく「受験者集団の中での位置」です。
研究者としての一言
統計的に言えば、これは「分布の中での順位を競うゲーム」です。だとすれば、学習中に測るべき指標も「自分が何点取れたか」ではなく「同じ問題を解いた集団の中で何位にいたか」になります。この視点があるかないかで、答練や模試の使い方はまったく変わります。
必要な勉強時間の目安が「800〜2,000時間」と幅を持つ理由
各予備校が示す目安を整理すると、おおむね次のようになります。
| スタート地点 | 勉強時間の目安 |
|---|---|
| 簿記2級レベルの知識がある | 約500〜1,000時間 |
| 初学者・2級から時間が空いている | 約800〜2,000時間 |
「なぜこんなに幅があるのか」と戸惑う方が多いのですが、理由は明快です。
- 前提知識の差……2級の理解度が「解法暗記どまり」か「なぜそうなるか説明できる」かで、必要時間は倍近く変わります
- 学習の質の差……理解しないまま演習量だけ積むと、時間だけが伸びます
- 算定方法の差……各社が自社受講生の実績や一般的な指標をもとに出しているため、母集団が揃っていません
ですので、この数字は他人と比べるためのものではなく、自分の可処分時間から逆算するための材料として使ってください。
逆算の例
・平日1.5時間 × 5日=7.5時間/週
・土日3時間 × 2日=6時間/週
→ 週13.5時間 × 52週 ≒ 年間約700時間
この方が「初学者・800〜2,000時間」の目安に立つなら、1年で1回、2年で2〜3回の受験を織り込んだ計画が現実的です。そうであれば、講座選びでは「保証期間の長さ」が最重要になります。ここまで具体化して初めて、比較表の数字が意味を持ちます。
【2027年度の出題区分表改定】いま講座を選ぶ人が最初に確認すべきこと

ここは、他の比較記事がほぼ触れていないにもかかわらず、2026年後半に講座を選ぶ人にとって最も影響が大きい論点です。
少し丁寧に説明します。
何がいつから変わるのか(2026年度は現行区分表/2027年4月以降は新区分表)
出題区分表とは、日本商工会議所が定める「どの級で何を出題するか」の指針です。2025年12月25日、この区分表の改定に関する情報が公表されました。要点は次のとおりです。
| 対象期間 | 適用される区分表 |
|---|---|
| 2026年度(2026年4月1日〜2027年3月31日) | 従来どおり(2022年度適用版) |
| 2027年度以降(2027年4月1日以降の試験) | 新しい出題区分表(暫定版) |
つまり、2026年11月の試験は現行範囲、2027年6月の試験からは新範囲という切り替わりになります(暫定版であるため、今後更新される可能性があります)。
なお、企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」については2026年度から出題対象とされている点も、あわせて確認しておきたいところです。
1級への影響が大きい2つの柱:紙の手形・小切手の廃止と新リース会計基準
今回の改定の背景には、実務環境の大きな変化が2つあります。
①紙の手形・小切手の廃止
全国銀行協会が電子交換所における手形・小切手の交換を廃止する方針を決定したことを受け、手形に関する内容が試験範囲から除外される方向とされています。簿記の代名詞ともいえる「受取手形」「支払手形」が範囲から消えるのは、学習者にとって象徴的な変化です。1級では手形の割引・裏書や保証債務といった論点が該当します。
②新リース会計基準への対応
企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」が、2027年4月1日以後開始する事業年度から強制適用されます。これに合わせて出題内容・出題級の見直しが行われており、1級の会計学・商業簿記に直接効いてくるのがこちらです。
新リース会計基準で「1級の会計学」はどう変わるか
ここは、受験テクニックではなく会計の考え方そのものが変わる話なので、少し踏み込んで説明します。制度改定の意味がわかると、学習の負担感はむしろ下がります。
従来の考え方:リース取引を「ファイナンス・リース(実質的に買ったのと同じ)」と「オペレーティング・リース(単なる賃借)」に分け、前者だけを資産・負債として貸借対照表に計上(オンバランス)し、後者は支払リース料を費用処理していました。
新しい考え方:借手側は原則として、この区分をせずほぼすべてのリースを「使用権資産」と「リース負債」としてオンバランスします。国際的な会計基準(IFRS第16号)との整合を図る改定です。
この変更が財務諸表に与える影響を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 変化の方向 | 理由 |
|---|---|---|
| 総資産 | 増える | 使用権資産が計上されるため |
| 負債・有利子負債 | 増える | リース負債が計上されるため |
| ROA(総資産利益率) | 低下しやすい | 分母の総資産が増えるため |
| 費用の内訳 | 組み替わる | 支払リース料 → 減価償却費+支払利息 |
| 営業利益・EBITDA | 改善して見えやすい | 費用の一部が営業外の利息に移るため |
重要なのは、企業の実態は何も変わっていないのに、財務諸表の見え方が変わるという点です。これは会計学が長年扱ってきた「実質優先思考(形式ではなく経済的実質で判断する)」の典型例であり、資産・負債の定義そのものを問う理論問題として、会計学で出題されやすいテーマです。
学習者へのメッセージ
新基準は、暗記で対応しようとすると分量に押しつぶされます。しかし「なぜ賃借なのに資産と負債を計上するのか」——この問いに自分の言葉で答えられれば、個別の処理はそこから導けます。改定は負担であると同時に、丸暗記型の学習者と本質理解型の学習者の差がはっきり出る局面でもあります。
ここを乗り越えた方は、実務でも財務諸表を「読める」人になります。
目標検定月別・あなたが選ぶべき講座の条件
| 目標 | 適用範囲 | 講座選びの条件 |
|---|---|---|
| 2026年11月 | 現行区分表 | 残り約4か月。直前対策・答練パック中心の選択が現実的。フルコースを新規に始めるには時間が厳しい |
| 2027年6月 | 新区分表 | 新範囲対応が明記された教材かを必ず確認。改定初年度は各社の対応スピードに差が出やすい |
| 2027年11月以降 | 新区分表 | 新範囲対応が前提。保証期間が2027年11月をカバーするかを確認 |
特に注意していただきたいのが、2026年11月を目標にしつつ、不合格なら2027年6月へ——という計画を立てる方です。
この場合、改定をまたぐことになるため、延長・保証制度の対象範囲に「改定後の教材が含まれるか」を申込前に確認してください。ここは各社で対応が分かれる可能性が高い部分です。
教材の「版」で失敗しないためのチェックリスト
- □ 講座の教材が、自分の目標検定月に適用される区分表に対応しているか
- □ 改定後の差分教材・補講が無償で提供されるか
- □ 保証・延長期間中に改定をまたぐ場合の扱いが明記されているか
- □ 中古教材やフリマアプリで購入したテキストの発行年(古い版は手形・リースの記述が丸ごと使えなくなる可能性)
- □ 市販テキストを併用する場合、対応年度の記載を確認したか
簿記1級の通信講座を比較する5つの軸

ここまでの試験構造を踏まえると、「どの機能にお金を払うべきか」が見えてきます。
簿記1級講座の比較軸は以下の通りです。
①答練・模試の「量」と「母集団」
②会計学(理論)の講義設計
③質問対応
④保証・延長制度
⑤実質コスト
①答練・模試の「量」と「母集団」──相対評価の試験で最も効く投資
答練(答案練習)とは、本試験形式の問題を時間を計って解き、採点・解説を受ける演習のことです。1級では、これが講座の価値の中心だと私は考えています。
理由は先ほど述べたとおり、1級が集団の中での位置を競う試験だからです。独学の最大の弱点は、「自分が今どのくらいの位置にいるか」を知る手段がないことにあります。
確認したいポイント
- 答練の回数と、本試験レベルの問題が何回分含まれるか
- 成績処理(順位・平均点・科目別偏差値)が返ってくるか
- 公開模試の受験者数(母集団が大きいほど位置の推定精度が上がる)
- 解説が「解き方」だけでなく「どこで差がつくか」まで示しているか
なお、フルコースを取らずに答練パック・模試パックだけを単体で購入できる講座もあります。独学派にとって、これは非常に費用対効果の高い選択肢です(後述)。
②会計学(理論)の講義設計──計算科目と同じ教え方では伸びない
会計学は1級で初めて登場する科目で、計算だけでなく理論(なぜその会計処理をするのか)が問われます。ここで多くの学習者がつまずきます。
教育現場での実感として、計算科目が得意な人ほど会計学で苦戦する傾向があります。計算は「手を動かして慣れる」が有効ですが、理論は概念の体系を頭の中に作る作業で、必要な学習の型がまったく違うためです。
確認したいポイント
- 会計学が独立した講義として設計されているか(商業簿記の付録扱いになっていないか)
- 会計基準の「趣旨」から説明する講義か、結論の暗記に寄っているか
- 理論用の教材(論点整理・キーワード集など)が用意されているか
- 音声ダウンロードなど、反復に向いた形式があるか(理論は反復との相性が良い)
2027年度からの新リース基準対応を考えると、この軸の重要性はこれまで以上に高まります。無料体験講義がある講座では、ぜひ会計学のサンプルを視聴して判断してください。
③質問対応の「回数」ではなく「返答の深さと速度」
多くの講座が「回数無制限の質問対応」を掲げています。ただ、比較すべきは回数ではありません。
- 返答までの時間……翌営業日までに返るか、数日かかるか。学習の停滞時間に直結します
- 返答の深さ……「この処理はこうです」で終わるか、「なぜそうなるか」まで返ってくるか
- 質問の形式……テキスト入力のみか、答案の画像を送れるか
- 回数制の場合の実質……チケット制で回数が限られる講座もあります。追加購入の要否を確認しましょう
教育者としての実感を一つ。伸びる学習者に共通するのは、わからない箇所を24時間以内に誰かに聞く習慣を持っていることです。逆に「あとでまとめて聞こう」とした疑問は、たいてい放置されます。質問のハードルの低さは、学力そのものより合否に効きます。
④保証・延長制度──受験機会が年2回しかない試験での実質的な保険
1級では、この制度の価値が他資格と比べて格段に高くなります。年2回しか受験機会がないため、「今回ダメでも次回まで教材と講義が使えるか」が学習継続の生命線になるからです。
確認したいポイント
- 延長期間の長さ(目標検定月+何か月/何年か)
- 延長時に追加費用が発生するか
- 延長対象に答練・模試も含まれるか(講義のみのケースあり)
- 前述のとおり、区分表改定後の教材が延長対象に含まれるか
⑤実質コスト(合格祝い金・教育訓練給付金・再受講割引を差し引いた金額)
表示価格だけで比較すると、判断を誤ることがあります。実質コストは次の式で考えてください。
実質コスト = 受講料 -(各種割引)-(合格祝い金)-(教育訓練給付金)+(再受験時の追加費用)
| 制度 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 教育訓練給付制度 | 指定講座を修了すると受講料の一部が給付される国の制度 | 対象講座・受給要件が決まっている。ハローワークで要件確認を |
| 合格祝い金 | 合格・条件達成で1万〜3万円程度の還元 | 条件(合格体験記の提出など)を事前確認 |
| 各種割引 | 再受講割引、他社からの乗り換え割引、学割など | 割引率は変動。期間限定が多い |
| 期間限定キャンペーン | 月ごとに価格が変動する講座もある | 申込タイミングで数万円変わる場合がある |
※制度内容・金額はいずれも変更されます。申込前に必ず各社公式サイトおよび厚生労働省・ハローワークの案内をご確認ください。
簿記1級の主要通信講座・予備校を比較【料金・教材・サポート一覧】
ここからは主要6社を、前述の5軸に沿って整理します。
どこが一番かではなく、どんな人に向くかという形で書いています。
| 価格帯 | 目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 低価格帯 | 0万〜9万円台 | デジタル完結型。教材は別売のことも |
| 標準帯 | 10万〜13万円台 | 講義+教材+答練が一式。サポートも標準装備 |
| 大手予備校帯 | 13万〜17万円台 | 通学ノウハウ・模試の母集団・対面フォローが強み |
1〜2年の長期戦を見込む人、保証制度を重視する方→クレアール
実績と模試を重視する人→資格の大原
自宅以外の学習場所が欲しい人→資格の学校TAC
再受験で経験者コースを探している人→ネットスクール、資格の学校TAC
CPAラーニング|完全無料

| 料金 | 0円(無料会員登録のみ)。※登録から30日経過後も利用する場合、アンケート回答が必要とされています |
|---|---|
| 提供元 | CPA会計学院を運営するCPAエクセレントパートナーズ株式会社 |
| 強み | 日商簿記3級〜1級の講義動画・テキスト・問題集・模擬試験まで無償で提供。教材はPDFでダウンロード可能。講師は公認会計士(1級は商業簿記・会計学と工業簿記・原価計算で担当が分かれる) |
| 留意点 | 答練の順位・偏差値といった成績処理の仕組みがない(=集団の中での位置がわからない)。個別の学習相談や保証・延長制度もないため、進度管理は自力になる |
| 向いている人 | 費用をかけずに1級の学習を始めてみたい人。有料講座と併用してインプットを担わせたい人 |
「無料でここまで提供されるのか」と驚かれる方が多いサービスです。
会計人材の裾野を広げるという理念のもと運営されており、教材の質を理由に敬遠する必要はありません。実際、CPAラーニングでインプットを進め、答練だけ予備校で購入するという使い方をしている学習者は少なくありません。
ただし、本記事の5軸に照らすと、①答練と母集団と④保証・延長制度は構造的にカバーされていません。無料である以上これは当然で、欠点というより役割の違いと捉えるのが正確です。
したがって、おすすめの向き合い方は次のとおりです。
- まずCPAラーニングで学習を始め、数か月続けられるかを自分で検証する
- 続けられそうなら、そこで初めて有料講座を検討する(このとき、自分に足りない機能がはっきりしている)
- あるいは、インプットは無料のまま答練・模試パックだけを単体購入する
いきなり十数万円の講座を申し込むより、この順序のほうが失敗が少ないと私は考えています。費用ゼロで自分の適性を確かめられるという点で、1級の学習における選択肢の幅を確実に広げてくれるサービスです。
たぬ吉資格塾|買い切り型・視聴期限なし、「なぜ」の理解を重視する人向け
| 料金の目安 | 講座単位の買い切り制。原価計算講座(全17回)/商業簿記・会計学講座 第Ⅰ部(全22回)/同 第Ⅱ部(全20回)が各33,000円(税込)、3講座すべてで99,000円(税込)。工業簿記はYouTubeで無料公開 |
|---|---|
| 運営 | 監査法人での実務経験を持つ公認会計士が運営するオンライン講座。YouTubeでの発信を基盤としている |
| 強み | 仕訳や計算方法を暗記させるのではなく、「なぜそう処理するのか」という論理から解説する設計。1講義15〜30分前後で音声学習にも対応。視聴期限がなく、試験範囲の改定があれば改定論点の動画が追加されると案内されている |
| 留意点 | テキスト・問題集は付属せず、市販教材を各自で用意する必要がある(公式には「みんなが欲しかった」「スッキリわかる」「パブロフ簿記」などが挙げられています)。また、答練・模試・成績処理・質問対応といったサポート機能は持たない |
| 向いている人 | 費用を抑えつつ理解の質を重視したい人。市販教材で自走できるが、独学だと「なぜそうなるか」がわからず止まってしまう人 |
この講座の位置づけは、フルパッケージの予備校とは異なります。「市販テキストを読み解くための解説動画」——公式にもそう説明されており、実際そのとおりの設計です。
会計学を教える立場から見て、この設計思想は理にかなっていると感じます。後述するとおり、1級でつまずく最大の原因は「暗記で解く癖」です。処理の結論だけを覚えると初見の論点で手が止まりますが、「なぜこの仕訳になるのか」を理解していれば、そこから導けます。論理から説明するという一点に絞り込み、その代わりに価格を抑えている——役割が明確な講座です。
もう一つ、実務的に価値が高いのが視聴期限のない買い切り型である点です。年2回しか受験機会がない1級では通常「保証・延長制度」が重要になりますが、期限がなければその心配自体が生じません。試験範囲の改定時に動画が追加されるという案内も、2027年度の区分表改定を控えたいまは意味を持ちます(対応範囲は購入前に公式サイトでご確認ください)。
比較するときの注意点
価格を比べる際は、市販教材費を必ず加算してください。テキスト・問題集を一式そろえると2万〜3万円程度かかるため、3講座すべてを購入する場合の総額は12万円前後になります。これは標準帯の通信講座と同水準です。
一方、工業簿記が無料である点、必要な科目だけ買えば費用を抑えられる点は、この講座ならではの柔軟さです。「原価計算だけ苦手なので、そこだけ補強したい」という買い方ができます。
逆に、答練で自分の位置を測りたい方、質問できる相手が欲しい方には物足りません。その場合は、この講座でインプットを固めつつ、別途模試パックだけを予備校で購入する——という組み合わせが現実的です。
※料金・講座構成・改定対応の内容は変更される場合があります。最新の情報は公式サイトでご確認ください。
スタディング|スマホ完結・低価格帯、可処分時間が細切れな人向け

| 料金の目安 | 簿記1級合格コース 66,600円(税込)/冊子教材は別売 |
|---|---|
| 強み | 1講義5〜15分の細分化された講義。スマホでインプットからアウトプットまで完結。AIによる復習提案 |
| 留意点 | 紙のテキストは別売。質問はチケット制のため、回数を超える場合は追加購入が必要 |
| 向いている人 | 通勤時間など細切れ時間の合計で学習時間を作る社会人 |
「まとまった2時間」が取れない方にとって、講義単位の短さは想像以上に効きます。
一方、紙に書き込みながら理解を固めたいタイプの方には、デジタル完結が逆にストレスになることもあります。
無料体験で自分の相性を確かめてください。
クレアール|範囲を絞る設計と保証制度、社会人の長期戦向け

| 料金の目安:1級講義パック 132,000円(税込)、1級ストレートフルパック 145,000円(税込)ほか。期間限定キャンペーン価格が月ごとに変動します | |
| 強み | 合格に必要な範囲に絞る学習設計。1回30〜40分の講義。回数無制限の質問対応。目標検定月+1年の保証制度 |
|---|---|
| 留意点 | テキストが簡潔なため、網羅的に学びたい人には物足りなく感じる場合がある。価格が月変動するため比較しにくい |
| 向いている人 | 働きながら1〜2年の長期戦を見込む社会人。保証制度を重視する人 |
年2回しか受験機会がない1級において、保証制度が受講料に含まれている点は構造的に理にかなっています。
区分表改定をまたぐ計画の方は、この制度の対象範囲を必ず確認しておきましょう。
資格の大原|合格実績と模試、通学系ノウハウを通信で受けたい人向け

| 料金の目安 | 1級合格コース(6か月)Web通信 124,700円(税込)ほか、学習期間・受講形態別に複数コース。模試パック・直前対策パックの単体購入も可能 |
|---|---|
| 強み | 合格実績の公表。模擬試験の母集団が大きい。予約不要の質問対応 |
| 留意点 | 通信講座専業と比べると価格は高め |
| 向いている人 | 実績と模試を重視する人。独学者が模試だけ利用する使い方も有効 |
大原の価値は、①答練と母集団に最も強く応えている点にあります。
1級が集団の中での位置を競う試験である以上、受験者数の多い模擬試験を持っていることは、それ自体が機能です。母集団が大きいほど、返ってくる順位や偏差値の精度が上がります。
もう一つの特徴が、長年の通学指導で蓄積されたカリキュラム設計です。「いつまでに何を仕上げるか」があらかじめ組まれているため、自分で計画を立てるのが苦手な方ほど恩恵が大きいと言えます。挫折パターンの2つ目(演習開始の遅れ)を、仕組みで防いでくれる形です。
一方で、価格は通信専業の講座より高めになります。ただ、フルコースを取らずに模試パック・直前対策パックだけを購入するという使い方も可能です。
独学や低価格帯の講座で学びつつ、位置の把握だけ大原に頼る——費用対効果でいえば、この使い方はかなり合理的だと思います。
ネットスクール|講師との距離とライブ講義、孤独に弱い人向け

| 料金の目安 | 日商簿記1級標準コース 教材込 124,000円(税込)ほか、経験者コースあり |
|---|---|
| 強み | ライブ講義でのチャット質問。受講生専用コミュニティ。個別学習コンサル |
| 留意点 | 最新の合格実績の公開が限定的 |
| 向いている人 | ひとりだと続かない人。再受験で経験者コースを探している人 |
この講座の特徴は、通信でありながら「一方通行にならない」設計にあります。ライブ講義中にチャットで質問を投げられるため、疑問を持ち越さずに済む。前述したとおり、わからない箇所を24時間以内に解消する習慣は、学力そのものより合否に効きます。その習慣を仕組みで支えてくれる点は、軸3(質問対応の質)として高く評価できます。
長期戦を戦ううえで、学習コミュニティの価値も軽視できません。教育現場でも、同じ目標を持つ相手がいる学習者の継続率は明確に高いという印象があります。1級は1年前後を一人で走り続ける試験ですから、「今日どこまで進んだか」を共有できる場があるかどうかは、想像以上に効いてきます。
また、再受験者向けの経験者コースが用意されている点も特徴的です。一度学習した範囲をゼロから受け直すのは時間の無駄になりやすいため、二度目の挑戦を考えている方は、まずこちらを検討する価値があります。ライブ講義の日程が合うかどうかは事前に確認しておきましょう。
LEC|網羅型テキストと選べる講義、体系的に理解したい人向け

| 料金の目安 | 1級パーフェクトコース 通信Web 132,000円(税込)。答練パック・直前対策パックの単体購入も可能 |
|---|---|
| 強み | 試験範囲を網羅したテキスト(論点ごとに優先度ランク付け)。理解度に応じて講義を選べる仕組み。24時間の質問制度 |
| 留意点 | 網羅型ゆえに分量は多い。短期決戦には向きにくい |
| 向いている人 | 会計士・税理士も視野に入れ、体系的な理解を積みたい人 |
LECのテキストは、試験範囲を広くカバーしたうえで、論点ごとに重要度のランクが振られている点に特徴があります。網羅型の教材はともすると「どこから手をつければいいかわからない」状態を生みますが、優先度が示されていれば、限られた時間の配分を判断できます。
会計学を教える立場から見ると、網羅的なテキストを1冊持っておく価値は、合格後にこそ出てきます。1級の学習で扱う会計基準は、公認会計士試験の財務会計論や税理士試験の財務諸表論とかなりの部分で重なるためです。上位資格を視野に入れている方にとって、ここで積んだ体系的な理解はそのまま次の土台になります。
理解度に応じて講義を選べる仕組みがあるのも、独学と併用しやすい設計です。ただし分量が多いことは正直なデメリットで、可処分時間が少ない方が短期決戦で使うと、消化しきれないまま試験日を迎えるリスクがあります。時間に余裕がある学生の方や、腰を据えて取り組める方に向いた講座です。
TAC|教材の完成度とスクーリング、再挑戦組にも選択肢

| 料金の目安 | 1級本科生1年コース Web通信 165,000円(税込)、上級合格本科生 126,000円(税込)ほか |
|---|---|
| 強み | 市販でも定評のある教材と講義の連動。通信生への自習室開放・スクーリング制度。割引制度が豊富 |
| 留意点 | 価格帯は高め |
| 向いている人 | 自宅以外の学習場所が欲しい人。再挑戦で割引制度を活用したい人 |
TACの強みは、市販でも定評のある教材シリーズと、講義が同じ体系でつながっていることです。書店で手に取ったことのある方も多いと思いますが、あの教材を作っている組織が講義も設計している、という一貫性があります。独学で市販教材を使っていた方が講座に切り替える場合、学習の連続性が途切れにくいという利点もあります。
通信生であっても自習室を使えたり、通学講義に参加できるスクーリング制度がある点も特徴です。「自宅では集中できない」という悩みは、意志の弱さではなく環境の問題であることが大半で、場所を変えるだけで学習時間が伸びる方は少なくありません。この制度は、そこに実務的に効いてきます。
価格帯は高めですが、再受講割引や他資格受講者向けの割引など割引制度が豊富に用意されているため、条件に当てはまる方は実質負担が下がります。特に再挑戦の方は、表示価格だけで判断せず、まず適用できる割引がないかを確認してみてください。
各社の「合格実績」の数字をどう読むか
ここは研究者として、どうしても一言添えておきたい部分です。
比較サイトでよく見かけるのが「合格者2,564名のうち218名が◯◯生。10人に1人」といった記述です。数字自体は公表情報にもとづくものですが、読み取りには注意が必要です。
- 母集団が異なる……社会人向け通信講座の受講生と、2年制専門課程の学生を合算した数字が示されることがあります。両者では学習時間がまったく違います
- 分母が非公表のことが多い……合格者「数」は出ても受講者数が出ない場合、合格率は計算できません
- 算定期間が揃っていない……年度単位、回単位など基準が各社で異なります
- 非公表=実績がない、ではない……方針として公表しない講座もあります
合格実績は「その講座で学べば同じ結果になる」ことを保証する数字ではありません。参考情報の一つとして扱い、判断の主軸は前述の5軸に置くことをおすすめします。
【タイプ別】あなたに合う簿記1級講座の選び方

働きながら/可処分学習時間が1日1〜2時間の社会人
この層で最大のリスクは、実力不足ではなく「学習の中断」です。優先順位は次のとおり。
- 講義が短時間で区切られているか(細切れ時間で消化できるか)
- 保証・延長制度が手厚いか、または視聴期限のない買い切り型か(1年で決着しない前提で選ぶ)
- 音声ダウンロードなど、ながら学習に対応しているか
「最短6か月コース」に惹かれる気持ちはよくわかりますが、週13時間しか取れない方が6か月コースを選ぶと、ほぼ確実にカリキュラムから脱落します。コース期間は希望ではなく、実際の可処分時間から選んでください。
この層におすすめの講座
第1位:クレアール
目標検定月+1年の保証制度があるため、1回で決着しなかった場合の保険になります。範囲を絞る学習設計も、時間が限られる方と相性がよい設計です。
第2位:スタディング
通勤時間などの細切れ時間を積み上げるスタイルなら、1講義5〜15分という単位の短さが効いてきます。
迷ったら「不合格でも次回まで走り続けたいか」で判断してください。Yesならクレアール、短期集中で一度に決めたいならスタディングです。どちらも無料体験があるので、講義の長さが生活リズムに合うかを実際に確かめてみましょう。
2級合格直後にそのまま1級へ進む人
最も効率がよいタイミングです。2級の知識が残っているうちに着手できるため、必要時間を抑えられます。この層では網羅性と演習量を優先しましょう。
ただし一つ注意点があります。2級で通用した「解法パターンの暗記」は、1級では通用しません。この切り替えができるかどうかが最初の関門です(詳しくは次章)。
この層におすすめの講座
第1位:資格の学校TAC
2級で市販教材を使っていた方が多いため、同じ体系の教材で1級に進めるのは想像以上に大きな利点です。学習の連続性が途切れず、用語や図解の作法を覚え直す手間が省けます。
網羅性を重視するならLEC、演習量と模試を重視するなら資格の大原も有力です。
この層は勢いがある反面、暗記の癖をそのまま持ち込みやすいのが弱点です。理由から説明してくれる講義かどうかを、体験講義で必ず確認してください。
一度不合格を経験した再受験者(経験者コースという選択肢)
再受験者に必要なのは、インプットのやり直しではなく「なぜ落ちたか」の特定です。
- 科目別の得点を見て、足切りだったのか総合点だったのかを切り分ける
- 時間切れなら演習不足、初見論点で沈んだなら理解の穴
- そのうえで、経験者コース・答練パック・模試パック・特定科目だけの買い切り講座など必要な部分だけを購入する
再受験でフルコースを買い直すのは、多くの場合オーバースペックです。多くの講座に再受講割引や経験者向けコースがありますので、まず確認しましょう。
この層におすすめの講座
敗因によって選ぶべきものが変わります。
- 総合点が届かなかった方……第一候補はネットスクール(経験者コース)。学習法から立て直せるうえ、質問できる環境が孤独な再挑戦を支えてくれます
- 足切りで沈んだ方……資格の大原の模試パック・直前対策パックを単体購入し、科目別データで弱点を特定するほうが費用対効果は高くなります
- 特定科目だけ苦手な方……たぬ吉資格塾
のように科目単位で買える講座で、その部分だけ補強する手もあります
まずは前回の成績通知を手元に出し、どのパターンかを確定させるところから始めてください。ここを飛ばして講座を選ぶと、同じ失敗を繰り返しやすくなります。
学生・時間が確保できる人(会計士・税理士も視野に入れる場合)
この層は、目先の合格より「理論の土台」を優先したほうが後で得をします。1級の会計学で扱う会計基準の考え方は、公認会計士試験の財務会計論・税理士試験の財務諸表論とかなりの部分で重なるためです。
網羅型のテキストを持つ講座を選び、会計基準の趣旨まで踏み込む講義を選ぶことをおすすめします。
この層におすすめの講座
第一候補は資格の大原。
理論の扱いが体系的で、上位資格の学習にそのまま接続できます。
網羅性をさらに重視するならLEC、学習環境の選択肢を求めるなら資格の学校TACも候補です。
もう一点、この層の方にお伝えしておきたいことがあります。
公認会計士を本気で検討しているなら、1級を目指さず会計士講座を検討した方が効率的です。範囲が大きく重なるため、会計士講座の中で1級レベルの内容を吸収してしまう進め方もあるからです。
判断材料が足りないと感じる場合は、会計士予備校の資料を取り寄せてカリキュラムと学習期間の実像を確認してから決めることをおすすめします。無料で比較できるので、進路の見通しを立てるうえでは有効です。
費用を最優先したい人(無料教材・買い切り講座との組み合わせ)
受講料をできるだけ抑えたい方には、無料教材・買い切り型講座・単体購入を組み合わせるという選択肢があります。
| 組み合わせ例 | 概算費用 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 無料の学習サービスのみ | 0円 | まず始めてみたい人。自走できる人 |
| 市販教材+買い切り型講座(必要科目のみ) | 約5万〜7万円 | 「なぜ」の解説だけ欲しい人 |
| 無料または買い切り講座+予備校の模試パック | 約3万〜10万円 | 自分の位置も測りたい人 |
ポイントは、「全部入り」を買わず、自分に足りない機能だけを買い足すという発想です。この設計ができれば、10万円以下でも十分に戦える環境は作れます。
この層におすすめの講座
まずはCPAラーニング(無料)から。0円で始められるため、「自分が1級の学習を継続できるか」を費用ゼロで検証できます。ここで数か月続けられれば、有料講座への投資も納得して踏み切れます。
その先の買い足しは、止まる原因によって変わります。
- 教材を読んでも理解できない……たぬ吉資格塾。論理から解説する講義で「なぜ」を埋める
- 自分の位置がわからず不安……資格の大原の模試パックを単体購入する
- そもそも机に向かえない……スタディング
など、学習の習慣化を支える仕組みがある講座へ
費用を抑えること自体は、まったく後ろめたいことではありません。大切なのは、削ってはいけない機能を見極めることです。
簿記1級で挫折する人に共通する3つのパターン

ここからは、比較表には出てこない話です。私が会計を教える立場で、長く観察してきた「つまずきの型」を共有します。講座選びの前に、これを知っておくと選択の精度が上がります。
パターン1|2級までの「暗記で解ける」学習法を1級に持ち込んでしまう
最も多いパターンです。簿記3級・2級は、出題パターンが比較的安定しているため、解法を覚えれば得点できる面があります。この成功体験が、1級では逆効果になります。
1級は範囲が広く、初見の論点が出題されます。暗記した引き出しの中に答えがなければ手が止まる。一方、「資産とは何か」「収益はいつ認識するか」という定義から考えられる人は、初見でも部分点をもぎ取れます。
伸びる人の共通点
処理を覚えたあと、必ず「なぜこの処理になるのか」を一言で説明できるところまで戻ります。説明できなければ理解できていないと判断し、その場で講師に聞く。これを習慣にしている学習者は、学習時間が同じでも到達点が明確に違います。
パターン2|インプットが終わらないまま試験日を迎える
次に多いのが、講義の消化に時間をかけすぎて、演習に入るのが遅れるパターンです。
気持ちはとてもよくわかります。理解が曖昧なまま問題を解くのは怖いですから。ただ、簿記は手を動かして初めて理解が固まる科目です。理解度7割で演習に入り、解きながら残りの3割を埋めるほうが、結果的に速く仕上がります。
目安として、試験日の3か月前には本試験形式の演習に入っている状態を作りたいところです。逆算すると、インプットに割ける期間が自動的に決まります。
パターン3|苦手科目を後回しにし、足切りで沈む
人は得意な科目を勉強したくなります。商業簿記が好きな学生は商業簿記ばかり解き、工業簿記・原価計算を後回しにする——これは本当によく見る光景です。
しかし1級には科目別40%の足切りがあります。合計点が足りていても、1科目が10点に届かなければ不合格です。得意科目を20点から23点に伸ばす労力と、苦手科目を8点から13点に引き上げる労力を比べれば、合格確率への寄与は後者が圧倒的に大きい。これは冷徹な数学の問題です。
講座選びでこの3つをどう予防するか
| つまずき | 予防につながる講座の機能 |
|---|---|
| 暗記依存 | 会計基準の趣旨から説明する講義/深い返答が返る質問制度 |
| 演習開始の遅れ | 学習フローの提示/答練の日程が決まっているカリキュラム |
| 苦手科目の放置 | 科目別の成績が返る答練・模試/個別の学習相談 |
こうして並べてみると、価格の安さより「自分の弱点が可視化される仕組み」にお金を払う意味が見えてくるのではないでしょうか。
簿記1級は独学でも合格できるのか

独学が成立する人・しない人の分かれ目
結論から言えば、独学での合格は可能です。実際に市販教材だけで合格している方もいます。ただ、成立する条件はかなり限定的です。
| 独学が成立しやすい人 | 講座を使ったほうがよい人 |
|---|---|
| 2級を「理解して」合格している | 2級を暗記中心で乗り切った |
| 自分で学習計画を立て、修正できる | 計画づくり自体が負担になる |
| 疑問を自力で調べ切れる | 調べても解決せず止まりがち |
| 期限のある目標を一人で管理できる | 締切がないと後回しになる |
| 受験回数に余裕がある | 期限内に決着させたい事情がある |
特に見落とされがちなのが、出題区分表の改定情報を自力で追える必要があるという点です。2027年度改定を控えたいまは、独学のハードルが一段上がっている時期といえます。
無料教材・市販テキストだけで進める場合の現実的なコストと時間
市販のテキスト・問題集・過去問を一式そろえると、おおむね2万〜3万円程度です。無料の学習サービスを使えばさらに抑えられます。
ただし、金銭以外のコストがあります。
- 教材選びと情報収集にかかる時間
- 優先順位を自分で判断する負荷(範囲が広いほど重くなる)
- 疑問が解決しないまま進む際の学習効率の低下
- 自分の位置がわからないことによる不安
「独学+講座の一部購入」というハイブリッド戦略
私が最も合理的だと考えるのが、この折衷案です。
ハイブリッド設計の例
- インプット……市販テキスト、または無料の学習サービスで進める
- アウトプット……市販の問題集で論点別に演習
- 位置の把握……予備校の答練パック・公開模試だけを単体購入して、集団の中での順位を確認
- 弱点補強……成績データで判明した苦手科目だけ、単科講座を追加
フルコースの3分の1程度の費用で、独学の最大の弱点である「現在地がわからない」を解消できます。多くの講座が答練パック・模試パックを単体販売していますので、検討する価値は十分にあります。
まずは無料で学習を始めてみて、数か月続けられるかどうかを自分で検証する——そのうえで、必要な部分だけ有料の講座を足していく。この順序であれば、大きな失敗は避けられます。
受講開始から本試験までの学習スケジュール例

あくまで一例ですが、逆算の感覚をつかむ材料としてご覧ください。
12か月プラン(初学者・働きながら)
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1〜5か月目 | 商業簿記・会計学のインプット。並行して工業簿記・原価計算にも着手(4科目を同時進行させるのが鉄則) |
| 6〜8か月目 | 全科目のインプット完了。論点別の問題演習を回す |
| 9〜10か月目 | 本試験形式の演習開始。答練・過去問。科目別の得点を必ず記録 |
| 11か月目 | 公開模試を受験。順位と科目別成績から弱点を特定 |
| 12か月目 | 弱点科目に集中投下。過去問の反復 |
6〜9か月プラン(2級合格直後・学習時間を多く取れる人)
2級の知識が残っている前提の圧縮版です。インプットを3〜4か月で終え、残りをすべて演習に充てます。1日3時間以上を安定して確保できる方向けで、社会人が無理に選ぶと途中で破綻しやすいプランです。
直前3か月の使い方(過去問・答練の回し方)
- 時間を計って解く……1級は時間との戦い。解けるかどうかより、時間内に解けるかどうか
- 解き直しは翌日と1週間後……間隔を空けた反復が定着に効きます
- 間違いノートは「なぜ間違えたか」で分類……知識不足/読み違い/計算ミスを分けると、対策が変わります
- 捨て問の判断力を鍛える……全問正解は不要。取るべき問題を確実に取る訓練が本番で効きます
4科目の時間配分をどう決めるか
配点は4科目均等(各25点)ですから、原則として時間配分も均等に近づけるのが合理的です。そのうえで、答練の科目別成績を見て、10点の壁に近い科目に追加投下する——これが足切り回避の基本戦略になります。
簿記1級合格後のリアル|キャリアと次のステップ
経理・財務のキャリアで実際に評価される場面
簿記1級は、連結決算や高度な会計処理を扱える基礎知識の証明として機能します。ただし、資格そのものが自動的に処遇を保証するわけではありません。評価につながりやすいのは、次のような場面です。
- 連結決算・開示業務など、より専門性の高い業務への異動・応募
- 会計基準の改定対応を任される場面(まさに新リース基準のような局面)
- 監査法人や税理士事務所とのやり取りで、対等に議論できること
※取得によって必ず年収が上がる、就職できるといった性質のものではありません。実務経験や周辺スキルと組み合わせて初めて活きる資格です。
税理士試験の受験資格・公認会計士試験への接続
簿記1級の合格は、税理士試験の受験資格の一つとして認められています(要件の詳細は国税庁の公式情報をご確認ください)。また、公認会計士試験には受験資格の制限がありませんが、1級の学習内容は財務会計論・管理会計論とかなりの部分で重なります。
1級で会計学の理論に手応えを感じた方は、その先の進路を具体的に検討してみる価値があります。
1級の学習が「会計を読む力」に変わる瞬間
最後に、教える立場から一つだけ。
簿記1級の学習で本当に価値があるのは、資格そのものよりも「この数字はどうやって作られたのか」が見えるようになることだと私は考えています。
たとえば新リース基準を学べば、ある企業のROAが下がったというニュースを見たとき、「業績が悪化したのか、それとも会計基準の変更で総資産が増えただけなのか」を区別できるようになります。この数字の裏側を読む力は、経理でも投資でも、一生使える資産です。
いま目の前の論点が苦しくても、それは確実にその力に変わっていきます。
簿記1級の通信講座に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 簿記1級の通信講座の費用相場はどのくらいですか?
調査時点では、スマホ完結型のオンライン講座が6万円台から、大手予備校の通信コースが12万〜17万円程度と幅があります。教育訓練給付制度の対象講座や合格祝い金を利用すると実質負担が下がる場合があるため、表示価格ではなく実質コストで比較することをおすすめします。料金は改定されますので、必ず各社公式サイトで最新情報をご確認ください。
Q2. 簿記1級は独学でも合格できますか?
独学での合格例はありますが、出題範囲が広く、学習の優先順位を自分で判断する必要があるため難易度は高くなります。市販テキストや無料教材で基礎を固め、答練・模試パックだけを講座で購入するハイブリッドの選び方もあります。ご自身の学習経験と確保できる時間から判断されるとよいでしょう。
Q3. 簿記1級の勉強時間はどのくらい必要ですか?
一般に、簿記2級レベルの知識がある方で500〜1,000時間程度、初学者では800〜2,000時間程度が目安とされています。幅が大きいのは、前提知識や学習の質によって差が出るためです。ご自身の1日あたりの学習可能時間から逆算し、目標とする検定月を決めることをおすすめします。
Q4. 2027年度から簿記の出題範囲が変わると聞きましたが、影響はありますか?
日本商工会議所は2027年度以降の試験に適用する出題区分表の暫定版を公表しており、2027年4月1日以降に実施される試験から新しい範囲が適用される見込みです。2026年度中の試験には従来の区分表が適用されます。学習期間が長い1級では改定をまたぐ可能性があるため、目標検定月と教材の対応版を必ず確認してください。最新情報は日本商工会議所の公式サイトをご参照ください。
Q5. 簿記1級にネット試験(CBT方式)はありますか?
2級・3級ではネット試験が実施されていますが、1級は統一試験のみで、6月と11月の年2回の実施です(2026年7月時点)。受験機会が限られるため、目標検定月を確実に押さえる学習計画と、万一の際に受講を延長できる保証制度の有無が講座選びで重要になります。試験方式は変更される可能性があるため、公式情報でご確認ください。
まとめ|「安さ」で選ぶ前に、自分の可処分時間と目標検定月から逆算する
最後に、この記事の要点を整理します。
- 簿記1級は年2回・相対評価・科目別足切りあり。この構造から講座の評価軸が決まる
- 見るべきは①答練と母集団 ②会計学の講義設計 ③保証・延長制度。価格はその後
- 2027年4月以降の試験は新しい出題区分表が適用される見込み。目標検定月と教材の対応版を必ず確認する
- 合格実績の数字は母集団に注意して読む
- 挫折の主因は暗記依存・演習開始の遅れ・苦手科目の放置。これを防ぐ機能にお金を払う
- 費用を抑えたいなら無料教材+答練パックのハイブリッドが現実的
簿記1級は、たしかに難しい試験です。でも、「才能がないから無理」という種類の難しさではありません。正しい順序で、正しい量を、続けられる仕組みの中で積み上げれば届く——教える立場から見て、これは間違いなく言えることです。
まずは自分の1週間の可処分時間を実際に数えてみるところから始めてみてください。そこが決まれば、選ぶべき講座はかなり絞られます。
結論|簿記1級の通信スクールおすすめ
1〜2年の長期戦を見込む人、保証制度を重視する方→クレアール
実績と模試を重視する人→資格の大原
自宅以外の学習場所が欲しい人→資格の学校TAC
再受験で経験者コースを探している人→ネットスクール、資格の学校TAC
簿記1級か公認会計士か悩んでいる人いませんか?
公認会計士試験につなげようと簿記1級を考えている人は、公認会計士試験の勉強を始めた方が効率的です。
おすすめの公認会計士スクールは以下の記事で解説しているので、公認会計士をめざす方はこちらを参考にしてください。



