簿記1級は公認会計士への回り道?大学教員が解説

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公認会計士試験

簿記1級は回り道になるから受けるべきではない?

簿記1級を経由した方が結局は近道になる?

相反する2つの意見に悩んでいませんか?

これから貴重な時間を投資しようとしているのに、人によって言うことがバラバラだと、どちらを信じればいいのか分からなくなってしまいますよね。

実はこの意見の対立、決してどちらかが間違っているわけではありません。予備校側の記事と、受験生自身のブログとでは、そもそも「誰を想定して書かれているか」が違うため、導き出される結論も自然と変わってくるのです。

この記事では、会計学を専門とする現役の大学教員として、予備校でも転職エージェントでもない中立的な立場から、簿記1級と公認会計士試験の関係を整理します。

なぜ意見が真っ二つに分かれるのかという構造そのものを解き明かしたうえで、あなたのタイプに合った学習順序を一緒に考えていきます。読み終えるころには、ネット上の対立する意見に振り回されることなく、自分にとって納得のいく選択ができているはずです。

📌 この記事でわかること

  • 簿記1級と公認会計士試験の制度・範囲・難易度の違い
  • 「回り道」派と「土台になる」派、それぞれの根拠
  • 大学教員の視点から見た、簿記1級学習の教育的な意味
  • あなたのタイプ別に見る、最適な学習順序の判断フロー
  • 公認会計士を目指すうえでの学習方法の選択肢

記事の執筆者

会計ラボ
会計ラボ

・年間300人以上の大学生に簿記を教える大学教員。

・日本人の会計リテラシーを高めるを理念に、会計ラボを運営中。

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簿記1級と公認会計士試験、何が同じで何が違うのか

判断をする前に、まずは両資格の基本的な違いを押さえておきましょう。

試験制度・資格の性質の違い(検定試験と国家資格)

簿記1級は日本商工会議所が主催する民間の検定試験であり、自分の知識レベルを客観的に証明するための資格です。

一方、公認会計士は国家資格であり、監査という独占業務を行うことができる、経理・会計分野における最高位の資格に位置づけられます。

この違いは重要です。簿記1級はあくまで「知識の証明」であるのに対し、公認会計士は「業務を行う資格そのもの」という、根本的に性質の異なるものだと理解しておく必要があります。

学習範囲の重複度(財務会計論・管理会計論との対応関係)

両者の学習範囲には、確かに重複する部分があります。

簿記1級公認会計士試験
商業簿記・会計学財務会計論
工業簿記・原価計算管理会計論

簿記1級で学ぶ内容は、公認会計士試験の会計科目とかなりの部分で対応しています。ただし、公認会計士試験にはこれに加えて監査論・企業法・租税法・選択科目もあり、範囲は簿記1級よりもはるかに広い点には注意が必要です。

難易度・出題傾向の違い(基礎重視 vs 応用・理論重視)

同じ範囲を扱っていても、出題される問題の性質はかなり異なります。

  • 簿記1級:各論点の基本的な理解を問う問題が中心。商品売買や本支店会計など、基礎的な内容も出題される
  • 公認会計士試験:基礎的な論点はあまり出題されず、会計基準の背景にある考え方や実務指針まで踏み込んだ、理論的な深さが問われる

「範囲は同じでも、問われる思考の深さが違う」というのが、両者を経験した人たちに共通する感覚のようです。

必要な勉強時間の目安(簿記1級と公認会計士試験の比較)

勉強時間についても大きな差があります。

資格勉強時間の目安
簿記1級数百時間規模(2級合格レベルの知識がある前提)
公認会計士試験数千時間規模

数字はあくまで一般的に語られている目安であり、個人の学習環境や知識の定着度によって大きく変動します。ただし、公認会計士試験が簿記1級よりもはるかに多くの学習時間を要するという点は、多くの情報源で共通しています。

「簿記1級を先に取るべき」「回り道になる」──賛否両論を整理する

ここからが本題です。なぜこれほど意見が分かれるのか、双方の根拠を見ていきましょう。

「回り道になる」と主張する側の根拠

この立場の主な根拠は次のとおりです。

  • 簿記1級には「簿記1級でよく出題されるが、公認会計士試験ではあまり出ない論点」がある(基礎的な仕訳や本支店会計など)
  • 公認会計士試験の方が難易度が高いため、公認会計士試験の勉強を進めれば、自然と簿記1級レベルの実力は身につく
  • 簿記1級への合格は公認会計士試験の受験資格として必須ではない

つまり、「同じ範囲を学ぶなら、最初からより高いレベルの学習に取り組んだ方が効率的という考え方です。

「土台になる・取っておくべき」と主張する側の根拠

一方、この立場の主な根拠は次のとおりです。

  • 簿記1級で基礎をしっかり固めておくことで、公認会計士試験の応用的な内容にスムーズに入っていける
  • 働きながら学習する社会人にとっては、いきなり公認会計士試験に挑むより、段階的にステップを踏む方が挫折しにくい
  • 簿記1級の合格は、税理士試験の受験資格取得にもつながるという副次的なメリットがある

つまり、「基礎固めと自信の獲得を優先することで、結果的に挫折を防げるという考え方です。

なぜ意見が分かれるのか(受験生のタイプによって最適解が違う)

⚠️ 結論から言えば、どちらの意見も間違っていません。想定している受験生のタイプが違うだけです。

「最短で公認会計士に合格したい、学習に専念できる環境がある」人にとっては回り道になりやすく、「時間的制約がある中で段階的に力をつけたい」人にとっては、土台として機能しやすい、という違いがあります。

簿記1級で学ぶことの教育的な意味

簿記1級の学習が公認会計士試験の「土台の質」に与える影響

👨‍🏫 大学教員の視点

会計学を教える立場から見ていると、「回り道か土台か」という損得勘定の議論だけでは見えてこない側面があると感じています。

簿記1級で扱う論点は、確かに公認会計士試験ほどの理論的深さは求められません。しかし、「基礎的な処理を正確にできる」という土台があるからこそ、公認会計士試験で問われる理論的な背景の理解がスムーズに進むというのが、教育現場での実感です。基礎が不安定なまま応用に進むと、表面的な暗記に頼らざるを得なくなり、かえって理解が浅くなるケースを何度も見てきました。

教育現場で見えてきた、簿記1級経由が向いている人・向いていない人

教育現場で多くの学習者を見てきた経験から言えば、次のような傾向があります。

タイプ傾向
簿記1級経由が向いている人基礎の抜け漏れに不安がある人、学習習慣がまだ確立していない人、段階的な達成感を必要とする人
簿記1級を経由しなくてよい人簿記2級までの内容にすでに強い自信がある人、まとまった学習時間を確保でき、一気に駆け抜けたい人

「回り道」ではなく「準備運動」と捉えられるケース

もう一つ大切な視点があります。それは、簿記1級の学習を「回り道」ではなく「準備運動」として捉え直すという考え方です。

いきなり全力疾走するよりも、まず準備運動でウォーミングアップしてから走り出す方が、結果的に長く走り続けられる人もいます。学習における「回り道」かどうかは、時間の損得だけでなく、最後まで走り切れるかどうかという観点も合わせて考える必要があるというのが、率直な見解です。

あなたはどちらに向いている?タイプ別の判断フロー

ここまでの内容を踏まえて、自分がどちらのタイプに近いかを整理してみましょう。

📋 あなたはどのタイプに当てはまりますか?

A

最短で公認会計士に合格したい人→ 学習に専念できる環境があり、簿記2級までの内容にすでに自信がある方は、簿記1級を経由せず、直接公認会計士試験の学習に進む選択肢が合理的です。

B

社会人など、時間的制約の中で段階的に進めたい人→ 仕事と両立しながら長期戦を戦う方は、簿記1級を経由して基礎を固め、達成感を積み重ねながら進む方が、挫折を防ぎやすい傾向があります。

C

「公認会計士に絶対受かる自信がまだない」人→ まずは簿記1級に挑戦し、その過程で自分の適性や学習の継続力を見極めてから、公認会計士試験に進むかどうかを判断するという選択肢もあります。

公認会計士を目指すなら知っておきたい、学習方法の選択肢

独学の限界と、予備校・通信講座を活用する意味

公認会計士試験は、数千時間規模の学習が必要とされる長期戦です。範囲が広く、理論的な深さも求められるため、独学だけで完走するのは容易ではありません。

特に、監査論や企業法といった公認会計士試験特有の科目は、簿記学習だけでは触れる機会がなく、体系的なカリキュラムを組んで学ぶことの重要性が高い分野です。

公認会計士予備校を選ぶときに比較すべきポイント

予備校や通信講座を選ぶ際は、次のようなポイントを比較検討するとよいでしょう。

  • カリキュラムが自分の学習スタイル(通学・オンライン)に合っているか
  • 簿記1級レベルからのステップアップを想定したコース設計になっているか
  • 働きながら学習する場合、スケジュールの柔軟性があるか

特定の予備校が万人にとって最適とは限らないため、複数の予備校を比較したうえで、自分に合ったものを選ぶことをおすすめします。

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また、CPA会計学院を含むおすすめの公認会計士資格スクールは以下の記事で紹介していますので、併せてご覧下さい。

簿記1級の学習と公認会計士講座を無駄なくつなげる方法

もし簿記1級を経由する選択をした場合は、簿記1級の学習段階から、将来的に公認会計士試験へ接続することを見据えたカリキュラムを選ぶと、学習の無駄を最小限に抑えやすくなります。

一部の予備校では、簿記1級講座から公認会計士講座へのステップアップコースを用意している場合もあるため、早い段階で情報収集しておくとよいでしょう。

よくある質問

Q1. 簿記1級と公認会計士試験の学習範囲はどのくらい重複していますか?
A. 簿記1級の商業簿記・会計学は公認会計士試験の財務会計論と、工業簿記・原価計算は管理会計論と、多くの学習項目が対応しています。ただし公認会計士試験は同じ範囲でもより深い理論的理解が求められる点に違いがあります。

Q2. 簿記1級を取ってから公認会計士試験を受けるのは回り道になりますか?
A. 「回り道になる」という意見と「土台になる」という意見の両方があります。公認会計士試験の合格に簿記1級は必須ではないため、最短合格を目指すなら直接会計士試験の学習に進む選択肢もあります。一方で、段階的に力をつけたい方や、学習の基礎固めとして活用したい方には、簿記1級の学習が助けになるケースもあります。

Q3. 簿記1級と公認会計士試験、それぞれの勉強時間の目安はどのくらいですか?
A. 一般に、簿記1級は数百時間規模、公認会計士試験はその数倍規模の学習時間が必要とされています。ただし個人差が大きいため、あくまで目安として捉えることが大切です。

Q4. 公認会計士になるために簿記1級の取得は必須ですか?
A. 必須ではありません。公認会計士試験の受験資格に簿記1級の取得は含まれておらず、簿記の知識がなくても受験自体は可能です。ただし、基本的な簿記の理解がないと学習効率が落ちる可能性はあります。

Q5. 簿記1級を持っていると公認会計士試験で有利になりますか?
A. 学習範囲が重複する部分では基礎知識の面で有利に働く可能性がありますが、公認会計士試験は理論的な深さが問われるため、簿記1級の知識だけでは対応しきれない部分も多くあります。

まとめ:どちらが正解かではなく、あなたの状況に合った順番を選ぼう

この記事の要点を最後にまとめます。

項目ポイント
両資格の違い検定試験と国家資格という性質の違い。範囲は重複するが難易度・出題傾向は大きく異なる
回り道論の根拠公認会計士試験の方が難易度が高く、簿記1級固有の論点は出題されにくい
土台論の根拠基礎固めと段階的な達成感が、長期戦での挫折を防ぐ
大学教員の視点基礎の土台があるほど、応用的な理論理解がスムーズに進む
判断の軸学習に専念できる環境か、時間的制約があるかで最適解が変わる

「簿記1級を先に取るべきか」という問いに、万人に当てはまる唯一の正解はありません。大切なのは、ネット上の対立する意見のどちらが正しいかを探すことではなく、自分の状況に照らして納得のいく順番を選ぶことです。

じっくり自分のタイプを見極めたうえで、次の一歩を踏み出してみてください。

📖 次のステップへ進みませんか?

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▶ 簿記1級の学習方法から検討したい方:学習方法を徹底比較した記事はこちら

※「必ず合格できる」といった保証はできませんが、自分の状況に合った順番を選ぶことが、後悔のない挑戦につながるはずです。

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